じえふ4月のあしあと

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4月18日(カメ)

 左の手が動かなくなつた。ママが気づいておねえちやんに電話したら、おねえちやんがボクの先生に連絡してくれて、すぐに先生が来た。先生はボクだけを病院に連れ帰つてレントゲンを撮つたけれど、骨には異常がない。神経がつまつてゐるのかな、だつて。病院からなかなか帰つてこないのでママは心配するし、先生んとこの小さい女の子もボクのせいで夕ご飯がまだで、先生は女の子を連れてボクを家まで送つてくれた。何だか食欲がないな。水ばかり飲んでゐるから、ママや先生は糖尿病ぢやないかと心配してゐる。


4月19日(ブタ)

 おねえちやんが来た。ママが特別に作つてくれた鶏挽き肉まぜご飯とマグロの缶詰まぜご飯、朝は食べる気がしなくて残したけれど、おねえちやんが来たので食べてみた。また病院に連れて行かれて、他に悪いところがないかどうか検査された。いつもなら嫌なことされると怒るんだけれど、何となくその気にもならない。体温計をおしりに突つ込まれてもイビキかいて寝てた。どうやらボクはかなりの貧血らしい。不整脈もある。15キロあつた体重が10キロに足りなくなつた。もうちよつとで点滴も射たれるところだつたけれど、けふはちやんと食べたから許してもらへた。


4月21日(イヌ)

 ママが蒸しパンに薬を入れて食べさせてくれた。薬は嫌ひぢやないからいいんだけれど、蒸しパンも好きだからいいや。おねえちやんが、お古のタオルケツトを持つて来た。来たらすぐに、をぢさんとママと一緒に買ひ物に出かけてしまつた。
 先生が、とにかく食べて元気をつけなさいと云ふので、いつもは食べたことのないやうなご飯と、おトイレのシーツなんかを買つてきてくれた。お店にはこいぬやこねこがいつぱいゐて、いつもならおねえちやんたら釘づけなのに、けふはすぐに戻つてきた。
 シーツはいいんだけど、寝てるとこでおしつこするのやだな。うまく動けないからシーツもずれてしまふ。病犬用のご飯を持つて先生が来てくれた。年をとつても病気のときはたくさん栄養がいる。けふはちよつと首をあげてみた。なれない玄関の中はどんなだらう。そしたら少し元気が出てきたかなつて先生にほめられた。
 夜、おにいちやんとオクサンが来た。あしたガイコク旅行に行くから寄つたと云ふけど、照れなくてもいいよ。


4月22日(ライオン)

 きのうの夜、久しぶりにウンチをした。ボクは早起きだからおしつこをしておねえちやんを起こした。先生がくれたご飯が結構いける。年といつても歯はあるから歯ごたへがうれしい。おねえちやんは眠たさうだ。
 天気がいいので庭でひなたぼつこ。やつぱり自分の庭はいい。おねえちやんが昼寝をしたいと云ふからボクもおとなしく寝る。をぢさんはボクの新しい家を作つてゐる。
 夜もたくさん食べた。ボクがきれい好きなものだからオムツをさせられた。さつそくウンチをしてみた。つけたばかりのオムツを汚して悪いけど、ボクがウンチをするとみんなが喜ぶことをボクは知つてゐる。
 さうさう、昼間にマツサージをしてもらつたんだつけ。いつも同じ姿勢ばかりぢや大変だから。書いておかないと、もうやつてもらへなくなるかもしれない。


4月23日(ネコ)

 おねえちやんはボクがおとなしくしてゐるスキをみはからつて寝てゐる。お昼まえには起きて外に出してくれた。をぢさんがを作つてゐるのを見学。トイレシートがずれないように留められる金具も付いてゐる。ひなたぼつこをしながら立つたり坐つたり。好物の煮干しをもらつて水もぢやぶぢやぶ飲んだらまたウンチが出た。新しい家がおほかた完成したのでちよつと入つてみる。悪くないんぢやないかな。記念におしつこ。家ができたらおねえちやんは帰つていつた。オムツは一日であきらめた。


4月25日(カメ)

 新しい家は庭のいつもの場所にある。今度は雨のときに人間が濡れないでボクの世話ができるように、大きなビニールを張るらしい。おねえちやんがまた来てその手伝いをしてゐる。をぢさんがボクの家にペンキを塗つてやれつて云つたら、おねえちやん困つたなあという顔をした。ボクはあひかはらず手が動かないので退屈してゐる。そろそろ、ボクのおしつこのタイミング、覚えてくださいよ。


4月27日(ゾウ)

 やつぱりきのふ雨が降つた。結局ボクは屋根のあるガレージの隅にごと引つ越しした。おねえちやんが来たけれど、かうはつきりしない天気ぢやつまらない。ちかごろお店でせつせと買ひ物するから、スタンプがすぐにたまるとおねえちやんが云つてた。スタンプつて何?
 最近ではボクも賢くなつて、トイレの後に吠えてやることにした。すると夜中でもママやをぢさんがきれいにしてくれる。


4月29日(ライオン)

先生が電話をくれた。代はりにママが出て、よく食べてウンチもおしつこもいつぱいしてゐますと云つた。薬も終はつたけれど、手はまだ動かない。「そのままにしておくとどんどん筋肉が硬直するので動かしてあげませう、あとでうかがひます」。
 おねえちやんも来た。来てすぐ庭にまはつてボクに会ひに来てくれたのはいいけれど、すぐに家にあがつてしまつた。試しにちよいとウンチをしたら、おねえちやんは慌てて着替へるのも忘れて出てきた。でもヒトのウンチを見て喜ぶのはやめてほしい。
 けふは祭日だとかで、先生の小さい女の子も来た。ボクのこと「ケンちやん」だつて。失礼だと思つたけれど、ボクは寛容だ。お菓子をくれたので許してあげた。
 先生がボクの突つ張つた手をぐッと前へ引つ張る。痛くはない。これからはおねえちやんとママが毎日これをする。毛艶も良くなつたし、目も昔のようにくりッとしてきた。それがわかる先生はさすがだ(新しい家にも感心してた)。ゆいちやんもボクの魅力にイチコロみたい。
 先生がいつたん薬を取りに帰つてしまふと、急に眠くなつた。いつのまにか先生が戻つてきて(ゆいちやんはお召しかえをしてきた)、ボクがまだぼんやりしてゐる間に、狂犬病の注射を射つてしまつた。元気になつてからしませうなんてこの前は云つてたから、すつかり油断してゐた。もともとボクは病院と注射が嫌ひ。そのことについてはまたいずれ書かう。
ちよつと今のご飯に飽きて、朝なんか他のが食べたいと思ふことがある。それでも手にのせてくれれば嬉しいから食べるんだけどさ。


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