11月3日(イヌ)
けふはまたおねえちやんがボクの家の中をいぢくつてゐる。断熱シートを張つてゐるらしいが、ボクがいい気持ちで寝てゐると突然ガバッと屋根をあけて寸法をはかつたり変なものを広げたりするので寒いわ眠いわ困つたもんだ。なんだか壁も壊れたやうな気がする。だいぢやうぶかしら。できあがつてみると、部屋が銀色になつてしまつた。
11月7日(カメ)
しまつた。寝坊だ。目が覚めたらもう六時。ママはどうしたんだらうと思つたら、出てきたのはおねえちやんだつた。散歩に行くと、すでにどこかのイヌが通つたあとがある。
ところで、みなさんに問題です。断熱シートは片面が銀色になつていますが、ボクがあたたかく過ごせるにはどちら向きに張るのが正しいのでせう。
11月10(イヌ)
久しぶりの大学病院ご通院である。けふは顔なじみがゐない。みんな元気になつたんだらうか。
ボクはよくもわるくもなく、安定してゐる(体重はまたふえた)。もうここには来なくてもいいですよと云はれた。うれしいやうなさびしいやうな複雑な気分。
帰りがけにここの女子学生に囲まれてしまつた。みんな口々に「かはいい」だの「わたしにも撫でさせて」と云ひながら寄つてくる。なんでもつと早く気づいてくれなかつたんだらう。ああ残念。
いい機会だから、ここらでちよいとシッポを休ませやうかな。おねえちやんに原稿を催促されることなくのんびりと昼寝がしたい。