2006年8月

7月 よもだ亭日乗 目次 最新の日乗

8月12日(土) 気がついたら8月も中旬。

 カレンダーとにらめっこして、仕事の合間をぬって旅行をすることにした。
 決めたのがぎりぎりだったので、行く先は未知の土地ではなく、行きやすい場所ということで松本に。ちょうど3年前に行って以来である。あのときは雨に見舞われ、そのあとに松本行きを計画したときも雨が続くというので断念したのだった。

 八王子の駅で、オットが切符を受け取っているあいだ、わたしはスタバへ行ってカフェラテを調達。車中でのお楽しみ。お菓子(カシス&クッキーホワイトチョコレート)も買ってみる。
 およそ2時間で松本着。かつて入ったネパール料理の店が見あたらない。記憶違いか。
 ホテルに荷物だけあずけて、買ったばかりの日傘をさして、松本市美術館へ。日光だけでなく、熱も遮断するので、さして涼しいすぐれものである。
 美術館の入口には草間彌生の巨大彫刻。企画展示の書を観てから、常設展で草間彌生のアートを観照。年齢を知って、意外なお年にびっくり。
 美術館の喫茶(レストラン)のメニューが魅力的。これから暑い中、蕎麦をもとめて歩くのも……と思っていたら、お店のキャスターつき看板が、強風にふかれてこちらへすべってきた。それをあとから追いかけてくる警備員さん。受けとめるわたし。お昼は決まった。
 『カフェ・レストラン レカミエ』。天井が高くて広々した感じ。サンドイッチ(ハムとチーズの入ったホットサンド)とスープ(人参とパプリカの冷製スープ)のセットを2つ。グリーンサラダとラタトゥイユのようなものがつく。グレープフルーツジュースとコーヒー。美術館付属ながら、本格的。ディナーメニューもある。ミュージアムショップで草間彌生のパンプキン柄手ぬぐいを買う。

 さらに歩いて旧制松本高校へ。保存されている校舎は現在もさまざまな地域の用途に使われている。気温は高いはずなのに、なぜか涼しい。そして周辺のあがたの森公園を散策していると雲行きが怪しくなり、雷が鳴り出した。バス停へかけつけると、周遊バスはとうぶんこない。駅へ向かってあるいているうちに雨が降り出す。傘は晴雨兼用で大活躍。途中で路線バスが来たので駅まで戻る。
 駅周辺のショッピングセンターで雨宿り。そして時間になるのを待ってホテルへチェックイン。お茶を飲んだり地図を検討したりしながらしばし休憩。

 カエルの街、なわて通りを歩く。なわて通りはお祭りの準備中。そして橋を渡ったところで『喫茶まるも』に遭遇。
「ここ、まえに、今度来たら入りたいと言ってたとこだよね」
「今回はいつか入ろうね」
「いつかっていつにする?」
「……」
 喫茶まるもは、まるも旅館の一部で、昭和31年に、松本民芸家具の創立者が設計したもの。こんどはここに泊まって、朝ご飯はここで……。
オットは自家製チーズケーキ(ブルーベリーソース)とブレンドコーヒーのセット、亭主はリンゴのタルトとブレンドコーヒーのセット。チーズケーキは、昔のヨーグルトのような味。

 中町・蔵シック館、これもかつては前を通りすぎただけなので、さっそく中に入る。広い和室に急な階段。ええねぇ、昔の人はこうやって鍛えられたんねぇ。ここも会合に使えるらしい。

 松本へ来るまえに調べておいたイタリア料理の店の前を偶然通りかかる。他の候補もみたのち、その『Goloso(ゴローゾ)』へ行くことに。17時半からと看板に書いてあるが、準備中。中の人に声をかけたら18時からだという。そこでまた川を越えてなわて通りなどを散歩して18時に行ってみるとすでに先客あり。予約も多く、小さい店はすぐにいっぱいとなった。
 注文したのは、黒板に書かれいたチーズのキッシュ、夏野菜たっぷりの冷製パスタ、イベリコ豚のソテーローズマリー風味、そしてふつうの若鶏トマトのスパゲティ、サーモンと水菜の生春巻きを頼もうとしたら、代わりにおすすめのサーモンのカルパッチョを勧められたので、そちらにする(値段はこちらの方がずっと高い)。オットの生ビールはヒューガルデンホワイトというベルギービール。亭主はグレープフルーツジュース。
 チーズのキッシュは、表面がよく焦げたオムレツのような、それでいてチーズケーキのような、濃厚な味わい。オットはワインを追加。

 イベリコ豚にはトマトソースがかかっている。脂身に味わいがあっておいしい。
 若鶏トマトのスパゲティは柔らかい鶏と濃厚なトマトソース。鶏肉の切り方が独特で、シーチキンのよう。シーチキンみたいとほめられる鶏も複雑だろうが、やわらかく、ソースに馴染んで食べやすい。
 冷製パスタは、トマト、パプリカ、カリフラワー、ブロッコリー、ルッコラなど野菜がたっぷり。麺はしっかり冷やしてある。どちらもしっかりアルデンテなのがうれしい。
 思った以上に料理の量が多く(パスタもランチ1人前くらいはあった)、満腹。
 なわて通りからお祭りの演奏が聞こえてくる。

8月13日(日) 松本、二日目です。

 滞在中の予定はお天気と相談。
 朝食はいつものスタバで……松本にもあるにはあるが、駅の反対側でけっこう歩くし、なにも松本に来てまでスタバに行かずとも。いや、すでに心は決まっているのである。『喫茶まるも』。きのうメニューにハニートースト(くるみ)を見つけたのだ。
 てもとの資料には朝8時からと書いてあったが、8時に行くとすでに何組かの客がくつろいでいる。迷わずハニートースト、オットはオレンジジュース、亭主はカフェオレ。トーストは大きい山形のソフトなパン。格子状に切れ目を入れ、かつ2つに切ってある。そして蜂蜜とくるみがたっぷり載っている。

 朝食後、そのまま大糸線に乗って穂高へ。目的地は大王わさび農場。ここから周遊バスで行く予定。が、陽射しも強く、バスまで時間もたっぷりあるのでタクシーに乗る。終始無口な運転手さんだったが、ここで初めて信州弁を聞いた。
 わさび畑には暑さ除けの寒冷紗が張ってある。橋から眺めると、ワサビの上に巨大な海苔が覆い被さっているよう。水車小屋のある川で、ボートに乗る人々もいる。ここでも日傘は大活躍。影になる部分はあきらかに温度がちがう。携帯式移動木陰でわさび畑をのんびり一周する。
 入り口付近のお店の周辺は大にぎわいで、おもしろいところではワサビビールやワサビワインもある。コーヒー好きなわたし、ワサビコーヒーがあったら飲んでみたかも。さすがにオットはワサビビールを飲みたいとは言わない。
 戻ってくると、すぐにバスがくる時刻。記念にワサビソフトクリームを買い、食べながらバスを待つ。電車の時刻を見たら、駅でバスを降りてもそうとう待つことになるので、そのまま駅で降りずに約1時間、安曇野をバスでまわる。乗ってる限りは100円。

 昼すぎに松本へ戻り、おそばを食べる。オットは十割蕎麦、わたしはいろいろ(山菜、なめこ、おろし、とろろ、きのこ、大海老天ぷら)入った冷やしそば。
 松本市立時計博物館を見学。ほとんどの時計が今でも時刻通りに動いていて、ちょうど正時に鳴り出すらしく、職員の方が「そろそろ鳴るので聞いてみてください」と熱心に声をかけていた。続々と集まる見学者。時刻は2時。2時だから、どれも芸は2回。よそ見している間に終わってしまうので要注意。午後は不利だなぁ。
 そして町中にもあるからくり時計。こちらは3時に動くのをねらい、それまでしばし休憩。通りがかりに見つけてケーキに惹かれた『MIYUKIDO』へ。最近?リニューアルされたとのことだが、昔から地元の人に愛されている、ごくふつうの町のケーキ屋さん。オットはチーズクラフトと紅茶、亭主はモンブランとコーヒー。

 3時すこし前にからくり時計へ向かう。そこには手鞠の形をした大きいオブジェが。もっと人が集まってくるかと思ったら、わたしたちの他には観光客らしい男女が1組だけ。3時になり、「ぼんぼんの唄」という音楽が鳴りだし、毬の上部がせり上がって中から女の子の人形がいくつか出てきた。みな毬を手に持ってそれぞれ違う遊びをしながら回っている。やがて中へと引っ込んで、毬が閉まる。次に音楽が変わり、モーツァルトの「アイネクライネナハトムジーク」に乗って、楽士の集団が出てきた。それぞれ違う楽器を弾きながら回っているが、人形はどれも同じ顔をしている。あとから来た男女の観光客は途中で去って行き、たまに通りかかる人たちは何もなかっかったかのように通りすぎる。われわれだけが最後まで見ていた。携帯式移動木陰の下で。

 いちどホテルへ戻るつもりが、市内周遊バス「タウンスニーカー」にふらりと乗る。明日行く予定の松本城を通る北コース。
 やっとホテルの部屋にたどり着き、夕食会議。からくり時計へ行く途中で偶然見つけたインドネシア料理で意見が一致する。ホテルから行ってみるととても近い。ものすごく近い。
 バリをイメージした店だが、ベトナム料理あり、イタリアンあり。以前にはなかったと思うので聞いてみたら、1年半くらい前にオープンしたとのこと。まずはガドガド(インドネシアの野菜サラダ)、ルンビアサユール(野菜の揚げ春巻き)、オポールアヤム(鶏肉のココナツ煮)、オットはビンタン・バリ(インドネシアビール)、亭主はクランベリージュースを注文。お腹の具合を見たところで、冷製フォーとゴルゴンゾーラチーズピザ。フォーは非常にコシの強い麺で、冷製パスタをフォーで仕立てたようなのがうまくできていて、フォーがとても新鮮。ピザは薄くてパリパリのクリスピータイプで大きな葉っぱの上に載せられてきた。ハチミツ付き。どれも控えめで品な味つけ。あっというまに席がうまり、通りに出していた席に坐るお客も。

 雲行きがだんだん怪しくなり、おいしいコーヒーが飲みたくて、早足で喫茶店をめざすが、閉まっていたのでドトールでテイクアウト。店を出たとたんに大粒の雨。ホテルに駆け込む。さきほどのレストランのお客さんはどうしたろうか。なわてのお祭りは……。
 雷の音を聞きながら、部屋でコーヒーをすする。

8月14日(月) 松本、三日目です。

 『喫茶まるも』で朝食。今日はオットはジャムトースト、亭主はハニートースト。
 チェックアウトして荷物をあずけてからタウンスニーカー北コースに乗って、まずは旧開智学校へ。手前には現役の開智小学校がある。こちらの建物も旧に負けず立派。お隣の旧司祭館の建物も見物。
 お城の方へ戻りながらあてどもなく昼ご飯の場所を探す。あちこちの電柱に『そば処もとき』という看板が出ているので、それを目指して行ってみた。
 入口に、「ここのそばは吟醸そばなので短い。長いそばが好きなお客様は……」といった意味のことが書いてあった。もりそば2人前。1人前がせいろ2枚となっており、二段重ねの四角いせいろで登場。透き通った中に黒い粒があって、糸こんにゃくのような外観。食べてみるとかなりの歯ごたえ。

 松本城は長蛇の列。今日の混雑では天守閣まで60分かかるという。気にせず(ちょっと気にした)、列をなして入城。なかはとても涼しい。床の板の感触が気持ちいい。昔はみんな、何もしなくても健康でいられたんじゃないかしら。
 休憩は、きのうと同じ『MIYUKIDO』へ。慣れない土地では、気に入った場所ができるとなんだか安心。
 昨日と同じ席。時刻もほぼ同じ。音楽も同じモーツァルト。オットはチーズアメリカンと紅茶、亭主は昨日オットが食べたチーズクラフトとコーヒー。会計のときお店のおばさんに「昨日はどこかにお泊まりになったんですか」と聞かれる。
「はい、市内のホテルに」。
「では今日はお帰りになるんですか」。
 たしかに今日帰るのだが、まさか2泊してその3日間ほとんど市内にいたとは思うまい。
 東コースに乗って駅まで行き、時間があるので、残る南コースも一周する。こちらのコースは地元の足、という感じ。

 ホテルで荷物を受け取り、駅ビルでお焼き(しめじ野菜、かぼちゃ)と駅弁、オットはビール、亭主はコーヒーを買い、あずさに乗ったとたんに晩餐会。

8月17日(木) 

 『菜香』にて、仮祝い。おめあては季節の新メニュー。そのなかから選んだのは、苦瓜の海老すり身詰め黒豆ソース煮込み(季節)。他に水菜と干し豆腐の黒胡麻和え、蟹肉入り蒸し餃子、焼きぎょうざ、生ビール中。しめは定番の五目炒飯と香港焼そば。

8月19日(土) 

 横浜で仕事のあと、両国でオットと待ち合わせ、まずはお昼。蕎麦屋『ほそ川』を探す。
 細い路地に入り込んでいったら、普通の家の間に突然出現した。路地の入口に看板も何もないので知らなければわからない。中は新しくきれいで、土間っぽい。広々している。木の大きなテーブルに並んで坐り、田舎そばとせいろを注文。田舎そばはちょっと太めで黒く、歯ごたえが強い。せいろは山形産そば粉だという。こちらの方がやや細めだが、それでも太い方。せいろのお代わりを1つ頼むと、最初とはちがう産地のそばが出てきた。どこだっだか聞き逃した。蕎麦湯はと〜ろとろ。
 江戸東京博物館へで、「始皇帝と彩色兵馬俑」展を観る。ミュージアムショップでおばあちゃんへのお土産のお菓子を買う。
 記憶を頼りに、ちょっと迷って『ウール倶楽部』を見つけ出す。一歩中へ入ると、両国だということを忘れてしまう。生チョコレートのケーキとダージリン、アルディシュ(マロングラッセ入りタルト)とブレンド。
 家に帰って夕食。近所で夏祭りをしているので、準備がすんだあと、オットがビールとおかずの足しに焼き鳥を買ってきた。

8月20日(日) 

 千葉駅からモノレールでおばあちゃんの家へ。途中、「動物公園」「スポーツセンター」とかいう、超ローカルなネーミングの駅を通りすぎる。
 夏に熱を出したおばあちゃん、元気とはいえ年が年なだけにかけつけてしまった。言われなければいつもとまったく変わりない。
 今日は庭で取れた野菜でおもてなしをするから、と言われ、楽しみにしていたら、伯父から、突如ハサミを渡される。ピーマン、シシトウをありったけ収穫。そしてそれを天ぷらにして、そうめんや冷や麦、その他伯母の手料理などをいただく。
 このあたり、バスの利用者がめっきり減って、廃止されかねないという。それを阻止する廃止阻止運動に参加すべく、1時間に1本という駅までのバスに乗る。最終バスが16時台。
 おばあちゃん宅で、今日が甲子園の決勝戦らしいということを知った。駅の大きなテレビにも人が集まっている。
 東京駅の黒塀横町にある『吾照里(おじょり)』という韓国料理の店で、サラダ、ビビンバ、野菜粥などを頼んで軽く夕食。その後国立劇場で日舞鑑賞。

8月24日(木) 

 『ベリーニ』で残る2種類の冷製パスタ(冷た〜いトマトとモッツァレラチーズのカッペリーニ、ピリ辛!たらば蟹とアボカドのカッペリーニ)を食す。他にはブルスケッタ(ポテトとアンチョビブラックペッパー風味のブルスケッタ)、冷た〜いナスの生姜バルサミコソース、甘い玉葱と赤黄二色のピーマンのピッツァ(本日のピッツァ)、オットはビール、亭主は趣向を変えてマンゴーとグレープフルーツのジュース。食後のデザート、オットはいつものズコット、亭主は残る前回迷って選ばなかったマンゴーのタルト。これはヒットだった。

8月26日(土) 

 お昼にひょいと『カンパーニャ』へ行った。ものすごく久しぶり。オットはペペロンチーノ(大盛り)、亭主はブロッコリーとベーコンのクリームソース。ここのパスタの独特の食感は何事もなかったかのように健在で、うれしかった。食後にかぼちゃのプリンを頼もうとしたら、今日はないとのこと。店を出る。
 そして『珈琲倶楽部 田』へ行き、パリ風チョコレートケーキ、珈琲シフォンケーキ、ストロングブレンド2つ。それぞれ深紅とブルーのお揃いのカップ。ケーキを食べ終えてから、コーヒーをだけをよく味わうために、ストロングブレンドをお代わり。
 ちょいとお昼とコーヒーだけのつもりが、半日ぶらぶら楽しんだ。

8月29日(火) 夏休み第2弾、鎌倉旅行はのらりくらり

 今回は江ノ島から鎌倉入り。
 二度目の新江ノ島水族館。なぎさを再現した小さな水槽で、ヤドカリが別の貝殻をしきりに点検している。え、もしかして、これからヤドカリの引っ越し? こんな光景に遭遇できるなんて! と見ていたら、一瞬で新しい貝殻に移った。ををを! そのあと少し経って見たらまた元の貝殻に戻っていた。
 スタジアムでのイルカショー。新感覚のイルカパフォーマンスという「ドルフェリア」。新感覚ってなんだぁ? とちょっと不安ながら開始を待つ。カラフルな服を着たお姉さんたちが歌い踊り、イルカが跳ねる。お姉さんたちはプールに入ってシンクロもやる。踊りの振りが、イルカのサインになっているのかなぁ、よくできているなぁ、お姉さんたちは、元シンクロスイマーでダンスも練習したのか、ダンサーでシンクロも練習したのかな。このショーは8月いっぱいとのこと、まま、洗練されていてよかったです。
前回見損ねたウミガメにも会えた。

 お昼は生シラス丼、とメニューだけ決まっている。まえに入った『マイアミ貝新』にも生しらすの幟は出ているが、腰越まで行くことにする。お盆がすぎてからの夏休みが多く、今月末はお休みという貼り紙をした店が多い。そんななか、雑誌で見た『しらすや』が見つかり、何組か待っている様子なので、わたしたちも外のテーブルで待つ。待っている間に生しらす丼2つを注文。
 席につくとまずお新香と枝豆!が来る。あとから生しらす丼と味噌汁。生の透き通ったしらすは、いつも知っているしらすより長い。目がきらきら光っている。丼には、生姜と青紫蘇が載っていて、醤油をかけて食べてくださいと言われる。
 腰越から江ノ電で長谷へ。大仏へは明日行く予定で、とりあえず休憩。ところが『邪宗門』『ベルグフェルト』もお休み。ここなら知ったお店がいくつかあると思って降りたのですが、はぁぁぁ。
 そこで、最近できたらしいアジア風のカフェへ。オットはホットのチャイ、亭主はとカフェ・デンというベトナムコーヒーのアイス。暑いーと思ってアイスにしたら、店内は気持ちよいし、コーヒーを落としている器と別に氷の入ったグラスが来たのを幸いに、そのままホットで飲んでしまった(お店の人、アイスでしたよね? と心配そうに声をかけてくださってありがとう)。
 今回の鎌倉は、きっと大仏様が、新しい場所へも行きなはれ、と言っているにちがいない、そう強く感じる。
 そこで、カフェのほぼむかいにある収玄寺(いつも大仏や長谷寺へ行く途中、知っていながら通りすぎていた)を覗く。小さい小さいお寺。

 長谷から江ノ電で鎌倉へ。改札内の江ノ電鎌倉名店街にずんだ大福。立ち止まるとお店のおばちゃんがしきりに売り込んできたので気の小さい我らはそそくさと退散。思えばあれが最後のチャンス。
 若宮大路にあって非常に便利だけれど、かなりレトロなホテルにチェックイン。1階はブティック、2階は食堂を中心とした店、3階だけがホテル。荷物を置いて夕方の鎌倉を散策。

 お店はどこも休みが多い。ちょっと遅い夏休みなのね。そして 『ボデゴン』を覗いてみると、「当分の間工事のため休業します」。あぁぁ。そしてティーサイドのあったところに、テナント募集の看板が。今日はインドという気分ではなかったけれども、なくなったとわかると何だか惜しい。
 しかし今日はお泊まり、時間を気にする必要はない。鎌倉の店じまいが早いのを別にすれば。いつもなら、こんな時間、こんなところをうろうろ歩かないねぇ、さっき見つけたイタリア料理の店でゆっくりご飯にしようかと思っていたところ、いや、そのまえに雑誌で見たフランス料理の店の場所だけ確認しておこうと思ったら、その近くに『ティーサイド』という看板を見つけてしまった。

 どうやら移転したらしい。よかったねぇ、と言いながらイタリア料理店の前に引き返す。外でメニュー見ながらをさてどうしようと思っていたら、なんとなくインドもいいなと思ってきた。だって、なくなったと思ったところ、偶然見つけたんだもの。これは何かのご縁、とふたたび『ティーサイド』へ。

 元バーだったような店内。実際にバーカウンターもある。店員はお客さんも外国人ばかり。ガンジーのような顔のクールな感じのおじさんが(たぶんチーフコック)注文を取る。メニューが豊富でインドもさまざまな地域のカレーやネパールの料理もある。
 思えばモモを食べたのがここが初めて。しかし今日はモモがなく、ガンジーおじさんで、「モモなくてすみません」という。
「ネパールの人がいないから」料理人がお休みらしい。
「ネパール行ったことある?」「ない。ネパール料理は好きだけど」近所にあるし。
「どんな料理?」「モモ、チャオミン、それからカレー」ただ知っている料理を羅列する我ら。
「ネパールにはカレーない」きっぱり言うおじさん。行くのはインド・ネパール料理だから、わたしたちには区別がつかない。このおじさんの前であんまりネパール誉めちゃいけないのかもしれない。
話題を変えて「いつここに移ったんですか」と聞くと、今年の5月だそうだ。
「前の店には1回行ったことがあります」と言うと、「うん、顔は覚えてる」ほんとかね。
 見かけより話し好きなおじさんだった。チーフコックだとすると南のマドラス出身。しっかりお勉強して、今度はマドラスの料理をたくさん頼もう。

地元気分でスーパーで買い物をする。7時過ぎだというのに若宮大路小町通も軒並み閉店、10時まで開いている喫茶店を見つけて休憩。帰りにポツンと開いていた本屋さんを冷やかしてからホテルへ。

8月30日(水) 

 このホテル、夜10時から朝まで、専用夜間入り口というのがある。そこを通りたいばかりに早起き。
 モーニングと言っても、この時間に開いていそうな店はない。昨日は休みだった『イワタ』、開店準備の気配はあるが何時だろう。
 花に黒アゲハが戯れている。今回の旅行では行く先々で黒アゲハに出会う。まるで見守られているかのようだ。
 開店前なのを承知で『スターバックス』御成町店まで足を伸ばす。フクちゃんで有名な横山隆一氏の邸宅跡地にある素敵なお店。駅周辺をひととおりまわっているうちにスタバフクちゃん店の開店時間が来た。朝の空いている時間がチャンス。 ソイラテ2つ、シナモンスコーン、そしてふつうのスタバにはないフルーツロールケーキ。窓際に坐って、お庭のプールを眺めながらの朝食。

 堂々と正面からホテルに入り、チェックアウト。 ときどき雨がぱらつくが、傘をさすほどではない。今日は一日そんな天気。
 駅からバスで大仏まで行き、大仏さまにご挨拶。
 長谷駅の線路を越えて、海ぞいに、極楽寺方面へ歩く。途中見つけた御霊神社は鳥居の真ん前に踏み切り。なんかすごい。
 成就院の階段を上ってふり返ると。海が見える。成就院にお参り。宅急便のお兄さんが元気よく寺の階段を駆け上っていく。
 そして極楽寺まで来て、帰りは別の道を通って長谷へ戻ろう思ったら、どんどん道が狭くなって、行き止まり。引き返して、疲れたので極楽寺駅から江ノ電に乗る。

 長谷に戻って『以志橋』でおそばを食べようとしたら、今日から夏休み。本当に、おなじみさんとはご縁のない旅行である。『ベルグフェルト』はやっているが、今日のお昼はおそばな気分。そして鎌倉なら歩いていればそば屋に当たる、そんな思いこみを抱いて鎌倉文学館へ向かって歩き出した。ところが文学館をかなりすぎてもそば屋に出会えない。そこで、もう一踏ん張り、お昼の前に文学館を見学。企画展示は「角野栄子の世界 魔女からの手紙 魔女への手紙」

 由比ヶ浜から江ノ電で鎌倉へ。今日はずんだ大福は出ていない。
 鎌倉でそば屋を手当たりしだい見て歩く。今日は正統的な(?)ざる、とか、もりではなく、いろいろ具の載ったおそばが食べたい気分。八幡近くで「創作蕎麦」という看板を見つけてその『峰本』に入る。 自然薯蕎麦と薬膳蕎麦の紫蘇茗荷。いろいろったって、お腹の本番は夕食ですから。
 次に、未開の地、「大谷記念美術館」をめざす。なにせ、初めての場所を訪ねるのが使命だもの。でも、そんなこと言ってたら、展示替えで休館中だった。何ごとも予定通りに行かないことも、楽しむ旅である。
 そして本日の休憩場所。まえに行った中国茶館も良いが、コーヒーな気分。勘を頼りに、馴染みのない東口側の、駅前の喫茶店へ。明るいモダンで、おちついた感じの店内。店の名を冠したブレンドと、ガトーショコラをひとつ。かぎりなく生チョコ風で、甘すぎずおいしい。生クリームもしつこくない。ブレンドも苦みがうるさくなく、さわやかに抜ける感じ。お店の女性が、コーヒー豆を手で選り分けていた。
 鎌倉を離れる前に、きのう見つけて買おうか迷っていた手ぬぐいを見に行こうとしたら、今日はお休みだった。

 横須賀線の電車の中から、今回は行かなかった北鎌倉のクマさんに挨拶。そして横浜は中華街へ。
 ここでも黒アゲハに会う。予定通りに萬珍樓點心舗へ。いつもの半地下ではなく、2階に案内される。
 おすすめ料理からは、ラムの玄米クレープ巻き、冬瓜と空・陸・海の幸スープ、そして大好きな海老料理は大海老のマヨネーズからめ、牛肉シュウマイ。酸梅湯とビールで本祝いの乾杯。
 クレープ巻き、写真では中に包むものが並んでいたので自分で巻くのかと思ったら、巻かれた状態で出てきました。どれにもこれにも満足だが、ここの地鶏の塩魚炒飯ははずせないので追加。今日の味は上々。さらに、シャーベット(山桃)と有機かぼちゃのブリュレ(これは去年もありました)を追加。

 地元まで戻ってきてまたコーヒーが飲みたくなって、一杯。

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