2000年11月

10月 よもだ亭日乗 目次 12月

11月1日(水)

 お昼はアネージのリングイネでにんにくスパゲティ……じゃなくてにんにくリングイネ。
 せっせと食べているので、あっというまになくなりそう。近所のスーパーのご意見箱に、また仕入れてくれるよう投書してきた。


11月2日(木)

 健康診断。昨日の夜9時から水も飲んでいない。朝食はもちろん抜き。
昼食はカンパーニャへ。バリウムで多少空腹はおさえられているものの、やはりボリューム感のあるものが食べたい。カルボナーラ(オット)と、マッシュルームのトマトクリームソース(亭主)を食べる。
 駅周辺にアネージを売る店なし。別に他のでもいいと思うし、新たな発見があるかもしれないけれど、飽きるまで食べないと納得がいかないような気がする。
 夜は『庄屋』。ニユー・トーキヨー系では久々である。


11月3日(金)

 ジェフは、一ヶ月くらい毎日同じものばかり食べていたかと思うと、ある日突然嗜好が変わって見向きもしなくなる。飼主に似たのか、飼主が似たのか。
 オットが街に出て大正金時豆の新豆を見つけてきた。


11月4日(土)

 さっそく大正金時豆のサラダを作る。新豆は柔らかいのであっという間に茹であがる。久しぶりに作ったオットは勘が取り戻せない、と言う。
 お稽古に行く途中、荻窪のカルディに寄った。アネージが1袋340円のところ180円で、3袋だと480円で売られていたのでまとめ買い。


11月5日(日)

 わたくし浜離宮に住むネコでございます。よもださんがベンチでお弁当を広げたのでやってまいりました。お弁当のなかみは玄米のおにぎりと、いただきものだという鈴廣のカニ玉かまぼこ、それからオットさんが作ったお豆の料理。おにぎりとかまぼこをちょうだいしました。おいしゅうございましたがなにぶん量が少のうございます。つぎに来るときはおこぼれでなくわたしの分も……。

 バレエの先生の舞台を見たあと、カキフライを食べるつもりで『煉瓦亭』へ向かう。しかし煉瓦亭は定休日であった。気持ちの切り替えができないまま銀座を歩く。見るだけのつもりでみかわやへ向かう途中でみかわやのニューメルサ店を見つけた。カキフライ(サラダ添え)があり、迷っている余裕はなかった。ここのフライは衣が薄く、牡蠣をしっかり味わわせるタイプで、今日はこういうカキフライを食べたかったのだというオットの希望はかなったらしい。メインのお皿には6個のカキフライとレモンとパセリだけ。それからけっして飾りだけでないサラダと、使い切れないほどのタルタルソース。別注文のライスには漬け物が、パンにはジャムとバターがついてくる。パンに甘いジャムを付けてひと口食べたあと、カキフライを食べるのがまたおいしいとか。


11月6日(月)

 お腹のなかに昨日のカキフライが残っているような気がする。
夕食は鮭のあらで粕汁。子どものころよく飲んだ酒粕の甘酒を思い出す。本来は麹で作るものだろうけれど、わたしの甘酒はこれ。


11月7日(火)

 今日の夕食は、いなだのオーブン焼きバルサミコソース。家庭料理っぽくない味でおどろいた。


11月8日(水)

 蕪の葉を使って今日のお昼は野菜スパゲティ蕪酢大正金時豆のサラダがおかず。


11月9日(木)

「東京大聖書展」へ。
 中野で用事をすませ(『くれない茶房』で休憩)、夕食は新宿へ舞いもどって『玄海』へ。栗釜めしはすでになく、あらたに牡蠣釜めしが出ていた。当然のことながらオットは牡蠣釜めし、亭主は迷って魚三種釜めしを注文する。牡蠣の数は不明。魚の方は鮭、鯛、鱈。セットは前回のお通しのまぐろの佃煮が、貝を薄く切ったものと魚の卵の和え物になった以外は同じ。赤だし味噌汁の中身は豆腐となめこと三つ葉だった。今回はしっかりとお焦げが付いていて、ご飯自体も固めでおいしかった。最後のお茶漬けが食べでがあった。


11月10日(金)

 夕食はいただきものづくし。ししゃもの南蛮漬けとけんちん汁、別館特製ぬか漬け(きゅうり、蕪、茄子、パプリカ)。自前なのは玄米ご飯と納豆。


11月11日(土)

 今日はバレエの基礎クラスを教えることになっていて、緊張のためかお腹の調子がよくない。昼はおとなしくあたかかい素麺を食べることにした。先週カキフライを食べたころからずっと胃が重いのは、その前の健康診断のバリウムのせいか、カキフライの食べすぎか、それとも今日のプレッシャーのためだったのか。


11月12日(日)

 鉢に土を入れてパセリの種を蒔いたのはいつだっただろう。種が古かったせいなのか、一度めはどうやら失敗に終わったらしいので、神田古本まつりのついでにタキイで種を買ってもう一度挑戦。今朝もまったく変化がなくて、やっぱりだめかと思っていたら、夜には芽が出ていた。
 よもだ亭に棲むものは、過酷な環境を強いられる。よもだ亭で種から育った鉢物は今のところサボテンだけである。パセリがこのまま育ってくれれば、ハイドロカルチャーに植え替えて、観賞兼食用として活躍してもらうことになっている。


11月13日(月)

 大正金時豆と鶏の挽き肉でカレー風味の煮込みを作った。まえに似たような料理を作ったことがあると思ったら、それは大正金時豆と蕪のインド風だった。


11月14日(火)

 友人と会食。御茶ノ水で待ち合わせして、連れていかれたところは『カリフォルニア キュイジーヌ WINDS』。去年の暮れに横浜にあるこの店でひたすら牡蠣を食べたのだった。


11月15日(水)

 昨日食べたペペロンチーノは、茹で汁をスープに加えるタイプのものだった。こういう作り方もあるのかと勉強になったけれど、やっぱりオリーブオイルだけの方が好きだなぁ。と思って昼にはいつものにんにくスパゲティと、久しぶりに収穫したそばもやしのごま和え。


11月16日(木)

 デュッセルドルフ大学版画素描コレクション「死の舞踏」を見に上野の国立西洋美術館へ。企画の準備に5年の歳月をかけたというが、すぐ近くでインダス文明展と中国国宝展があるためか、観客は少ない。スタッフも少ない。おかげでゆっくりと見ることができた。

 暑い時期にはざるそばばかり食べていて、もうあたたかいそばなど食べられないなどと思っていた。それなのに『上野薮そば』へ行って、オットは牡蠣南蛮そば、亭主は鴨南蛮そばを注文し、冬はかけそばに限るなどとほざいている。牡蠣はあぶって少しこげ目があり、ぷっくりしておいしい。近いのでいちおう『釜めし春』の前まで行って、まだ栗釜めしがあることを確認して胸を撫でおろす。

 アメ横の乾物屋で鰹節と干し椎茸を買う。年配のご婦人が、丹波の黒豆の新豆はいつ入るかとお店の人に熱心にたずねていた。

 そのあと上野松坂屋の浮世絵展を見るつもりが、昨日になって新聞でムットーニ展が原宿で開かれているのを知り、予定を変更し(福助に行くのもやめ)て原宿へ。ムットーニさんはボックス型の機械仕掛け自動人形を作る人で、世田谷文学館でたまたま彼の作品を見て魅せられてしまった。

 かつて行ったことのある『田んぼ』が、代々木に本店を置いているので、原宿から歩いて行くことにする。山芋の磯辺焼きと豆腐(どちらも3きれずつ)、オットはあさり炊き込みおひつ膳(炊き込みご飯(あさり、三つ葉)、塩鮭の焼いたの、あさりの味噌汁、お茶漬けセット(味噌、わさび、切り海苔、鉄瓶に入ったお茶)、みかんの寒天寄せ)とビール(エビス)、亭主は鮭いくらおひつ膳(ご飯(鮭、いくら、三つ葉)、とろろ、あさりの味噌汁、お新香(大根の奈良漬けとたくあん)、お茶漬けセット(味噌、わさび、切り海苔、鉄瓶に入ったお茶)、みかんの寒天寄せ)を注文。山芋の磯辺焼きは、山芋を切り餅大の薄切りにして海苔を巻いて焼いている。ここの料理はおいしいのだが、全体的に塩辛い(だからご飯がおいしく食べられるのかしら)。白いご飯のお代わりが1度だけ無料なので、お代わりをしてお茶漬けにする。


11月17日(金)

 昨日はボジョレー・ヌーボーの解禁日でデパートのワインコーナーはわきたっていた。豆も負けずに「大正金時豆解禁!!」とか、「紫花豆解禁!!」などともりあがったら楽しいだろうと思う。でもそうなると手に入れるまで心おだやかではいられくなるかもしれない。
 久しぶりにほうとうを作って食べた。


11月18日(土)

 埼玉屋へ。店内は新豆が勢ぞろい。あれもこれもと欲しくなるけれど、重いのでとりあえず白花豆を1キロ。


11月19日(日)

 鮪のカマを焼いて食べた。大きいので食べきれなかったら残しておいて何かに使う予定だったが、骨が多かったので簡単にたいらげた。蓮根のブレイズも、なかなかよいこげ具合。こちらはとっくに料理集に載せたと思ったらまだだった。この調理法を知るまで、わたしにとって蓮根を食べることは苦行であった。丸元淑生さんに感謝。


11月20日(月)

 さいきんの悩み。そばもやしはおいしいけれど、殻を取るのが大変。いっしょに食べるというわけにもいかないので、地道に取りのぞいている。


11月21日(火)

 一週間ぶりに実家へ。そのまえに年末調整に必要な書類をもらいにゼイムショへ。
あまりにあまりのことなのでこのあたりで済ませておくけれども、実家にたどりつく前に疲労困憊していた。
 家に帰ると、オットが先日のいなだのオーブン焼きバルサミコソースがけを応用して鯖のオイル焼きバルサミコソースがけを作っていてくれた。


11月22日(水)

 ホームページを見たという雑誌社(主婦の友の『健康』という雑誌)からもやしの取材を受けた。
さいきんになって、見知らぬ人からホームページを見たというメールをぽつぽついただくようになった。「外国からのアクセスはありますか」と聞かれたけれど、たぶんないと思う。


11月23日(木)

 ジェフも大好きなおばあちゃんのいる千葉へ。
 駅の構内でずんだ餅を発見する。まだ食べたことのないずんだ餅、幻のずんだ餅。即座に買って(もちろん自分も食べるつもりで)おみやげに加える。
 おばあちゃん宅ではおばが二日がかりで作ったというローストビーフをいただく。伯父とオットはワインを二本空けた。おじが趣味で撮影したビデオや、旅行の写真を見る。デジタルビデオの画像は美しい。アルバム整理の極意も教えてもらった。ここにも記録の達人あり。
 そろそろおいとまという時刻。気になっていたずんだ餅もしっかり食べて帰ってきた。


11月24日(金)

 先日の取材用に作ったもやしがいっせいに食べごろをむかえたので、今日はもやしを食べる。
朝食:アルファルファはいつものこと。
昼食:カイワレのごま和えとカイワレ入りにんにくスパゲティを食べながら会議を開き、夕食のメニューをもやし石焼きビビンバとする。
夕食:レンズ豆もやし緑豆もやし石焼きビビンバ(卵と牛豚合挽も加わる)、他。


11月25日(土)

 本日の夕食は、バレエのお稽古のあとに持参の焼き芋。


11月26日(日)

 きょうは簡単にありもので済ます。メインディッシュはいただきものの鈴廣のあげかま。カイワレにとろろと鰹節をかけたもの、納豆、お味噌汁、玄米ご飯。おいしい、おいしい。


11月27日(月)

 そばもやしを摘む女とスパゲティを茹でる男。小説にならないだろうか。


11月28日(火)

 本日のディナーは舌平目のムニエル……近所のスーパーで2枚(1匹分)150円。


11月29日(水)

 スーパーが1割引セールの日。豆腐のできる豆乳というのを買ってみる。どこかでにがりを手に入れて……。


11月30日(木)

 「中国国宝展」を見に上野へ。
 上野についたのが12時だったので、国宝を見るまえに軽く食事をすることにする。公園の売店で、まえから気になっていた「幻の豚まん」を買い、飲み物を自動販売機で買って、公園のベンチで食べる。豚まんは大きくて食べ出があった。車を挽いたおじさんのまわりにカラスがたくさん集まって来た。名物の鳩は近よれず、遠まきに眺めている。おじさんはカラスにエサをやる。カラスもちゃんとわかっているらしい。カラスの羽が天鵞絨のように美しかった。
 人ごみにもまれて適度にお腹が空いたので、ひさびさに『福助』参り。途中で『釜めし春』をのぞいたら、もう栗釜めしはないようす。『福助』ではだいたいいつも頼む白玉クリームあんみつと田舎しるこ。
 新宿に戻ってきて東急ハンズで豆腐に使うにがりを買う。夕食は幻のカキフライ対決。他人にとっては別に幻でもなんでもない、『さぼてん』のカキフライを今まで食べるチャンスがなかったというだけの話。
 注文を聞くまえに、お茶とごま(白と黒のブレンド)が出される。ごまをすりながらカキフライ膳を待つ。牡蠣は4個、レモンが1切れとキャベツ。タルタルソースは小皿についてくる(表面が乾いていた)。ほかは、ご飯、味噌汁(わかめ、ねぎ、大根)、お新香(小茄子、蕪、蕪の葉)。牡蠣は淡泊で、ソースとごまでちょうどよくなる感じ。広島産であった。貝柱が大きくて、はじめて牡蠣の貝柱というものを意識した。
 今日は幻の上野大仏(今まで何度来ても見つからなかった。パゴダも見ていたのに)も発見した。



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