2000年12月

11月 よもだ亭日乗 目次 2001年1月

12月1日(金)

 先日のもやしの取材で、外国からのアクセスはないと思うと答えてしまったけれど、少なくとも一人、心づよい読者がいることを思い出した。長いこと海外で暮らしている友人が、日本の食事が恋しくなるとよもだ亭をのぞいてくれている。そのわりにはカレーやスパゲティが好きなわたしである。よし、これからは海外にいる日本の読者を増やそう!
 とはりきったわけではないけれど、お昼は田舎から送られてきたお餅を焼いて、チーズといっしょに海苔を巻いて食べた。おかずはカイワレのごま和えと大正金時豆のサラダ。カイワレはお餅といっしょに食べてもおいしい。
 そして夕食は久しぶりのチキンカレー


12月2日(土)

 お稽古のまえにドトールに入った。何かちょっとお腹に入れたいのでエッグタルトを食べた。外国のお菓子やデザートがブームになる(される)ようになった最初はティラミスだったろうか。ティラミスはこの前やっと食べた。シナボンはまだ。


12月3日(日)

 本日のお魚、サゴチ2切れ150円。サゴチってなんでしょう。サワラの別名のようですが、これは調べておかないと。


12月4日(月)

 お昼はかけそば。そばは先日埼玉屋で買ってきた自然薯そば(たしか成城石井にも置いてあった)。平打ちでコシがある。具は麩、海苔、緑豆もやし、山芋、あるものは何でも入れる。つゆは自家製
 明日は豆腐を作ってみよう。


12月5日(火)

 カレーに使った缶詰のホールトマトが半分残っていたのでお昼のスパゲティはトマトソース。
 午後、豆腐づくりに挑戦。にがりの包装に書かれている説明をもとに(これには大豆からの作り方が載っているが)、「豆腐のできる豆乳」500mlを加熱する。豆腐1丁分に対してにがりは小さじ1、とあるが、て豆乳500mlがどのくらいにあたるかわからないのでこれを1丁分としてしまう。お湯で溶かした粉末のにがりを沸騰した豆乳に入れ、待つこと約2分。ガーゼをしいたざるにあけて水気を切る。なんだかカッテージチーズを作っているような気がしてきた(見た目もそっくり)。


12月5日(火)

 カレーに使った缶詰のホールトマトが半分残っていたのでお昼のスパゲティはトマトソース。
午後、豆腐づくりに挑戦。にがりの包装に書かれている説明をもとに(これには大豆からの作り方が載っているが)、「豆腐のできる豆乳」500mlを加熱する。豆腐1丁分に対してにがりは小さじ1、とあるが、て豆乳500mlがどのくらいにあたるかわからないのでこれを1丁分としてしまう。お湯で溶かした粉末のにがりを沸騰した豆乳に入れ、待つこと約2分。ガーゼをしいたざるにあけて水気を切る。なんだかカッテージチーズを作っているような気がしてきた(見た目もそっくり)。


12月6日(水)

 昨日のつづき。
できた豆腐はかなり固め。にがりの分量の問題か、それとも水を切りすぎたか(こちらの可能性が高い)。味はけっして悪くないけれど、豆腐とは別のものという感じがした。
 それから昨日は10日前に作ったザワークラウトも試食した。こちらはキャベツの漬物と作り方がよく似ている。食べるとディルシードの香りが口の中に漂う。


12月7日(木)

 落語を聴きに国立演芸場へ。永田町界隈をさまよっているうちに開場の時間となり、お昼を食べずに公演に突入。休憩時間に売店でホットコーヒーとなぜかくるみゆべしを買って席で食べる。これが昼食となった。
 夕食は『煉瓦亭』へ。今日はエビフライにする。オットはとうぜんのことながらカキフライ(メニューは「かきフライ」)。エビフライは衣が口に触れた瞬間、まだエビに到達するまえからエビフライだった。エビを包んでいる自覚を持った衣だった。もちろん中身のエビも立派(かきフライより400円高い)。エビ(フライ)は昔から好きなので、エビフライの優劣なんて考えたことはなかったけれど、もう他のエビフライは食べられない(そんなことはないと思うが)。
 食べ終わっても6時。食後の水出しコーヒーを飲みに『どんパ』へ。こんな時間なので店は貸し切り状態だった。


12月8日(金)

 今夜は和風カレー。材料は鶏肉、人参、玉ねぎ、干し椎茸、昆布、鰹節、乳清豆の煮汁、カレー粉、小麦粉(全粒粉)。なんとも不思議な味である。でもご飯と一緒に食べるとまあいける。カレーうどんのスープにしたら合うかもしれない、ということで残りは明日のお昼に。


12月9日(土)

 昼。昨日のカレーにわかめと麩とめんつゆを加え、カレーうどんにした。一晩たったらおいしくなっていた。
 数日前から背中が痛い。背筋をいためたらしいのだが、身に覚えがない。というわけでバレエはお休み。


12月10日(日)

 夕食の食材。玄米、えぼだいの干物、味噌、醤油、酢、里芋、カイワレ(2)、麩、わかめ、昆布、鰹節(3)、干し椎茸、山芋、大根、しらす、納豆、大正金時豆、海苔、すだち。カッコ内の数字はそれを使用した料理の数。記載のないものは1品だけに使用。さて、何ができたでしょう。


12月11日(月)

 このまえちょっと浮気をしてバリラ (Barilla)というスパゲティを買ってみた。太さは1.4ミリ。お気に入りのパスタを増やしておくのが危機管理だと思うようになった。
 とても弾力のある麺で、ぷりぷりしている。口に入れてびっくり。アネージのコシの強さになれているとちょっと物足りないかな。オットはアネージに比べると粉の風味が弱いと漏らしていた。わたしにはわからん。


12月12日(火)

 夕食のメインはライスグラタン。よもだ亭で食べる簡単グラタンは、ホワイトソースを使わないのだけれど、今日はホワイトソースがかかっている。
 バターの代りのオリーブオイルと、全粒粉を使ったホワイトソース。牛乳のおかげで白さはとどめている。全粒粉のふすまが、焦がしたパン粉のようでなかなかいい。玄米ご飯と玉ねぎとハムの切落としをさっと炒め、ソースをかけてオーブンでチン。おいしかったごちそうさま。
 成功の秘訣は、他の材料を調理するまえに、まずホワイトソースを作ること、だそうです。失敗しても他の材料を無駄にしないため。


12月13日(水)

 牡蠣って、鍋で湯に浸かっているとか、カキフライのように衣で固めていないと、形がくずれてしまいそうだと思っていた。まえに牡蠣南蛮に入っている牡蠣にこんがりとした焦げ目がついているのを見て、あんなにぷっくりしたままどうやって焼いたんだろうと不思議に思っていた。
 今日、鉄板焼きにひょんなことから牡蠣が加わった。プレートの上にのったらへにょへにょだった牡蠣がぷっくりしだした。何でもやってみないとわからない。


12月14日(木)

 12日に開通した都営地下鉄大江戸線に乗る。
新宿を出発してまずは麻布十番へ。商店街をひととおり練り歩く。

 つぎは築地市場(築地市場を特集した雑誌まで持って、ほとんどミーハーである)。そうとは知らずに正面玄関から入ってしまった。遠くに見える場内をめざして駐車場を突き進む。あちこちに箱が積みあげられていて、雑然としている。こんなところを素人が歩いていていいのだろうかと心細くなり、とちゅう、場内用の車を走らせている人が通りすぎるたびに緊張した。

 場内は一般客でけっこう賑わっている。食堂の中でも寿司屋は長蛇の列。しかもちょうどお昼どき。あちこちでカキフライも見る。食べるまえに鰹節を買っておくことにする。普通のお店で買うより半額近い値段で、重さも(帰ってから量った)普通より重い。買ったのはたったの2本だけれど、鮪の削り節をオマケにもらった。  せっかく築地に来たからには新鮮なお魚が食べたいと思うのはみな同じ。けれど今日は寒いし行列したり急いで食事をするのはいやなので、場内唯一のイタリア料理店『トミーナ』へ。

 カウンターの中央に坐ると、目の前ではいい男系のお兄さんがコーヒーを入れている。オットはカキのトマトソースのスパゲティ、わたしは渡りガニのスパゲティを注文する。お店のおばさんに「初めてですか? 大江戸線で?」などと聞かれる。そうだと答えると、グラスワインの白をサービスしてくれた。銘柄はチンプンカンプンだがトスカーナ地方のワインだと説明を受ける。さて、スパゲティの味はというと、カキもなかなかだが渡りガニのほうは、カニのうま味がソースにいきわたっていて、なかなかおいしい(身がきれいに食べられなくてもくやしくない)。麺も細く(市場の人は忙しいので茹で時間が短くてすむものがいいとか)、茹で加減もちょうどよい。量は多め。調理は別の男性が奥の方でやっている。どうもいい男のお兄さんはコーヒーとワインの係らしい。

 食べながらおばさんといろいろな話をした。市場はけっして素人お断わりではないとのこと。入り口には素人お断わりのようなことが書いてあったりするけれど(そんなの見てない)、セリなどの時間を過ぎれば大丈夫、などと教えてもらい、来年の市場カレンダーまでもらってしまった。常連さんも多いようで、あとから入ってきたOLさんはお店のおばあさんと仲良くおしゃべりをし、寒いので食後の飲み物を食前にサービスしてもらっていた。また行ってみたいお店である。でもお寿司も食べたい。

 場外に出ると一般向けのお店でちょっとした街並みができている。鰹節がキロ単位で売られていて、これをさきに見ていたら気がひけただろうと思う。

 いきなり行って温かく迎えられ、すっかり気をよくしてしまった。また行きたいっ。

*おやつ、夕食(これも一筆書きたいんだけれど)は省略します。


12月15日(金)

 今日はサワラのオーブン焼きバルサミコソースがけ。田舎から送られてきたばかりの椎茸を実家でもらったので、一緒にオーブンで焼いて食べた。そういえば今年のはじめに椎茸を作ったのだった。


12月16日(土)

 おとといは、大江戸線で一周して新宿まで戻ってきて、久しぶりに老辺餃子館で夕食をとったのでした。去年さんざん通ったのに、今年ホームページを立ちあげてからまだ一度も行っていなかった。
 今日は久しぶりにお稽古へ行ったので、夕食は帰りにあんぱんを1個。今日も星がきれいで、この冬はじめてオリオン座をみとめた。


12月17日(日)

 先日のオリーブオイルと全粒粉で作ったまだらホワイトソースが思いのほかよくできたので、今日もまたグラタンを作る。友人からもらったイタリア土産のマカロニを入れたマカロニグラタン。
 ホワイトソースはもう料理集に載せても大丈夫なのだが、分量がてきとうなので困っている。


12月18日(月)

 朝食のあと干し椎茸と昆布を水につけておいて、昼食のあと鶏ガラを買いに行って、スープを作る。
じゃがいもは丸ごと、人参も玉ねぎも大胆に切ってドボン。生姜も入れてほっかほか。


12月19日(火)

 人生で三度目の河豚を食べる。ちなみに初めて食べたのは昨年。
河豚を食べる手つきもおてのもの、味も感じられるようになった。初めて食べたときはすっかり舞い上がって味なんてわからなかった。しかし牡蠣のように後をひきませんな。年に一度、誰かのお誕生日に食べられれば幸せじゃないでしょうか。


12月20日(水)

 近所に歩いて行ける唯一(でもないが)喫茶店がある。開いている場合は店の看板の下に「営業中」の札が下げられていて、スーパーに行く途中の歩道橋からも見える。定休日は月曜日。しかし日曜日は閉まっている。定休日でも休日でもないのに開いていないこともある。今日は寒くて天気もよくないかけれど、気分転換に散歩でもして帰りに寄ってこようと思って家を出た。休みだった。


12月21日(木)

 知らない土地でくつろげる喫茶店を見つけるのが趣味になっている。見つかるとその街がとても身近になる。
 立川はよもだ亭では生活に欠かせないお買い物の街なのに、いわゆるセルフサービス式の喫茶店しか知らない。駅ビルの中にあるのは別だけれど。そこで今日はすてきな喫茶店さがし。ビルの3階にあるそのお店は日本紅茶協会が「おいしい紅茶の店」と認定したところ。オットはロイヤルミルクティ、亭主はあくまでもコーヒー、それからエンガディーナというケーキをひとつ頼む。お店の名前がついたブレンドコーヒーはかなり深煎りで、透明感のある味。ケーキはヌガーの中にクルミとドライフルーツが入っていて、半分ずつでも満足。
 夕食は『カンパーニャ』へ。年末なので団体の予約があり、初めてカウンターへ坐る。カンパーニャ風サラダ、ペペロンチーノ、田舎風カルボナーラのタリオリーニ、オットは白ワイングラスを頼む。追加で5種類のソーセージのコンソメスープというパスタと、デザートにかぼちゃのプリン(亭主)とボネ(コーヒーのプリン――オット)とコーヒーを注文。ひたすらよく食う客であった。


12月22日(金)

 夕食はサワラのオーブン焼きバルサミコソースがけ。近ごろよく食べている(なんと言っても安い、うまい)。バルサミコ酢を一本使い切ってしまった。年内早めに買っておくべし。そしてオーブンを使うときは暖房を控えめにし、電力を抑えるべし。


12月23日(土)

 今日は何にしよう。スーパーはクリスマスに向けて鶏肉や鶏肉料理でいっぱい。鮭の前でひらめいた。これをホイル焼きにする。


12月24日(日)

 立川の中華街で買ったナツメ入りの月餅とエスプレッソでおやつ。クリスマスケーキの代りが200円の月餅である。
夕食のBGMは『第九』にしようかと思ったけれど『くるみ割り人形』にした。
 まだ今日はイブ。よそさまのお祝いごとでも楽しいことはうれしい。


12月25日(月)

 近ごろにんにくがあまり匂わない。このまえカンパーニャでペペロンチーノを食べて、久しぶりににんにくの香ばしい匂いをかいだ。家でもしょっちゅうにんにくスパゲティを食べているというのに。


12月26日(火)

 先日、『グリム家の食卓 手作りのオリジナルレシピ210』(白水社)という本を買った。グリム兄弟の弟の妻が書き残したレシピ集の翻訳なのだが、いちばん気になったのが「くるみの砂糖漬け」。はたしてこれは殻ごと調理するのだろうか。作り方をみるとどうもそんな気がする。ではどうやって食べるのだろう?? ああ知りたい。なんでも早い時期にくるみを採ってしまうのだそうだが、若いくるみがどんな状態なのかさえわたしは知らない。これも今後の宿題。


12月27日(水)

 バレエ「くるみ割り人形」を見に新国立劇場へ。偶然同じ日にチケットを取っていた友人と待ち合わせて昼食。まわりはオフィスが多く、ちょうどお昼どきだったので、回転が早そうなそば屋に入る。オットは基本のざる、わたしはかけそば、友人は田舎そば。わたし以外は冷たいそばで、二人には生わさびとなぜか団子がついていた。
 最前列(なんと友人も数席離れた最前列)で舞台を堪能したあと、新宿で友とお別れして、サザンテラスの『ペッシェドーロ』へ。ここは前に横浜でも行ったお店で、焼きリゾットがおいしい。行ってみると牡蠣の香味パン粉焼きなるメニューがあったので、とうぜん注文する。パスタはもちろんだが、スズキのグリルがなかなかおいしかった。
 今年最後のお出かけということで、場所をかえて食後のデザートを食べる。今朝、通りがかりに偶然見つけた渋皮マロンタルト、こんなに大きな栗がこんなにたくさん載ってていいのだろうか。フォークで切ろうとすると栗が重くて何度もひっくり返る。


12月28日(木)

 外でごちそうを食べたあとは特に、家で食べるごはんがおいしい。


12月29日(金)

 夕食はキーマカレー。見た目は挽き肉のカレー味炒めになってしまった。しかし口に入れて広がるいろいろなスパイスの複雑な風味はあなどれないのである。


12月30日(土)

 今日は冷蔵庫のお片づけ。蒸し鶏には、そば屋でもらった生わさび(使い残しの持ち帰り)と醤油をつけ、乳清は味噌汁に入れ、カイワレは秘伝のタレでしらすと和えた。


12月31日(日)

 夕食は早めに別館ですき焼き。年越しそばはよもだ亭が引き受けていたので、ふだん食べているそばと自家製めんつゆを持参した。いつものように具は入れず、三つ葉をそえてシンプルに。単純なのがいちばんおいしかった。
 今日でまる一年間、食卓の記録をつづったことになる。



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