2000年8月

7月 よもだ亭日乗 目次  9月

8月1日(火)

 昨日のコーヒーゼリーが残っている。今日のお昼はゼリー……だけじゃ何なので、発芽玄米ご飯一人分を解凍し、納豆一パックにめんつゆの出しがらを混ぜたもの、これも昨日の残りの枝豆を二人で食べ、食後のゼリーはコンデンスミルクをかけて食べてみた。ん、意外とおいしいんでないかな(最初のひとくちはちょっとびっくりしたけれど)。枝豆はさらに少しだけ残して夕食のスープに入れました。


8月2日(水)

 四大文明展のうち、初日のエジプト文明展を見に国立博物館へ。文明展なのに美術品ばかりで、文明の実像を身近に感じられる展示がなかったのが残念、とはオットの感想。他の文明展はどうだろうか。
 今日は食事運にめぐまれず。かつて、お天気運と食事運というのが反比例していたことがあった。近ごろは天気に関係なく食事運に恵まれていたかもしれない。お昼に目星をつけていたそば屋は定休日。代りに見つけて入ったお店で食べたおろしうどんは腰があるものの生ぬるい。夕食は前にも入ったことがあって、御用達にも載せたところ。そこの手打ちパスタをいつか食べようと思っていたので入ったのだが……。
 口直しに『ぶるまん』でブレンドを飲む。隣の亜麻亜亭で、最近オープンした西口地下の元焼け跡を眺めようかと思ったのだけれど、ここのブレンドはちょっと苦いので今日はパス。


8月3日(木)

 昨日帰りにオットと別れて実家へ。母が出かけるのでじえふの面倒を見ている。この暑さにもかかわらず、よく食べ、よく寝て、排泄もいい。
 帰ってから夕食。オクラといんげんのサブジチキンカレー2の残りスープ、納豆(めんつゆの出しがら)、大根おろしとしらす、わかめとにんにく味噌。


8月4日(金)

 先日デパートの古本市で買ったウミウシのガイドブックのページをめくる。子供の頃から蝸牛に恐怖しているけれど、ウミウシも苦手である。ぼーっと歩いていて突然ウミウシに出くわすことがないからこちらの方がまだまし。水族館だけ気をつけていればいいのだから。ではぜそんなものを買ったかといえば、写真がとてもきれいで、ウミウシだけでこんな本ができてしまったことにちょっとだけ感激したからだ。うへぇ、といいながらも全部見てしまった。まさかと思ったが、食べられるウミウシのコラムなんかあって、食欲がなくなった。
 話のついでに、イソギンチャクが好きである。水槽にイソギンチャクだけ入れて(必要ならば魚をいれてもいい)、育てられたらいいな、などと思う。海のサボテンといった感じだ。イソギンチャクの方はかつて熱心に本を探した。ないわけがないと勝手に確信して探していて、古本屋で見つけた。
 今日は赤飯を炊いた。あずきが古いせいか、茹でてもあまり色がでず、白っぽい赤飯になった。鰯はオーブンで焼き、かぼちゃは冷たいポタージュにした。


8月5日(土)

 今日は一日外にいることになるので、朝食をしっかりとる。
マックでスヌーピーのぬいぐるみを買うためにコーヒーを買う。スヌーピー誕生50周年の今年はなにかといそがしい。


8月6日(日)

 食べ物については特に書くことなし。


8月7日(月)

 昨日ひよこ豆を茹で忘れた。人参サラダも食べきってしまっているので朝食はいたって質素。忘れないうちに豆を水につけてじえふに会いにゆく。
 帰って夕食をすませると、デザートにはかぼちゃのゼリーが待っている。オットが先日のかぼちゃの冷たいポタージュにゼリーを加えて作ったのだ。甘みを加えればデザートっぽくなるだろうけれど、これならかぼちゃ豆腐と称しておかずにも通用すると思う。
 夕食後は忘れずにひよこ豆を茹で、カッテージチーズも作った。


8月8日(火)

 夕食は別館へ出張料理に行く。鰹を買って、昨日食べたカポナータとかぼちゃのゼリーを持参する。温かい料理がないので刺身用の鰹をサブジにする。他の材料は、ねぎ(これはサブジの定番)とオクラとシシトウ。かぼちゃゼリーは好評だった。


8月9日(水)

 今日は別館で、今年初の巨峰を食べた。まだ早いかなと思ったけれど、もう旬の味だ。去年食べ別れてからもう一年、久しぶりの再会は感激だった。さあ、今年も食べるぞ。巨峰狩りはいつの日か。


8月10日(木)

 気合いを入れて早起きをし、ほぼ開館直後に伊勢丹美術館の「謎の超古代文明展」を見る。すでに客入りは盛況で、ネクタイ姿のサラリーマンが熱心に見ている。インターナショナルスクールの生徒らしき子どもたちが、引率の先生に「Don't forget "OHAYOGOZAIMASU(おはようございます)"」と言われ、元気に挨拶をしながら入って行く。展示物はほとんどレプリカだが、いろいろ趣向が凝らされていておもしろい。四大文明展などはお宝を展示するだけでせいいっぱいなのかな。
 ちょうど今日は伊勢丹の古本市の初日なので、もちろん素通りはしない。あまり熱心な古本市の客ではないので、初日の気迫に圧倒される。目の色が違う。小川未明の童話選集と、幻獣辞典などを買い、コインロッカーに預ける。
 上野で開かれているバレエフェスティバルを見に来ているバレエの友人二人と久しぶりに会い、東京文化会館の精養軒で長時間ねばる。その後、向かいにある公園案内所の裏の『グリーンテラスウエノ』に席を移す。先払いで食券を買うタイプの小さな食堂のようなところのわりにはメニューが豊富である(しかも安い)。上野にはよく来る友人は知らなかったらしく、ちょっと感激していた様子。
 友人と別れ再び新宿へ。実は前日から小田急でも古本市をやっている。ちょっと覗いて次回の案内を送ってもらうよう頼むだけにするつもりが、いがいとガランとしているので閉店まで粘る。今まで探しても見つからなかった本を偶然みつけ、苦労が報われた。
 さて、夕食は久しぶり(?)にカレーが食べたくなってきた。新宿でまだ行っていないところに『ボンベイ』がある。前を何度も通ったことがあって、その感じと周囲の雰囲気からこことは縁がないだろうと思っていた所だが、カレー特集の雑誌に載っていたので見る目が変わった。そんなもんである。
 ボンベイターリというセットを頼むことにする。カレーは一人二種類頼めるので、チャナカリー、バイガンサブジ、チキンコルマ、プローンカリーを注文する。飲み物はマンゴラッシーとブルーベリーラッシー。オットは生ビール。おつまみに揚げ煎餅のようなものが付く。最初にボンベイサラダは鶏肉のハムのようなものが付いていて、あとはレタスの入った普通のサラダ。次にナンとライスの皿が来る。不思議な味の漬け物のようなものが付いてくるが正体が分からない。ライスは薄い黄色。カレーはすてきなステンレスの小皿に入ってくる。こんなのがうちにあったらいいな。味はほとんど辛くない。バイガンサブジは野菜がジューシーでおいしい。チャナカリーも豆の香りが生きている。プローンカリーのホタテはボイルしたものでいまいちであった。チキンは薄い灰色のような見たことのない色(ココナッツベース)。お腹がいっぱいになったところで、飲み物とデザートが来る。デザートは二人ともココナツプリン。杏仁豆腐のような味。アーモンドスライスがかかっている。ブルーベリーラッシーは普通のヨーグルトドリンクという感じ。
 厨房の人はみんな日本人だけれど、インド人に負けてません。一人できても落ち着いて食べられそうな雰囲気も気に入った。


8月11日(金)

 冷たいものの摂りすぎか、胃痛に悩まされている。朝食はしっかり食べるもののお昼がなかなか食べられない。夕食は冷たい野菜スープ(じゃが芋、いんげん、トマト、玉ねぎ)と別館からもらった鯵の南蛮漬けなど。食事中にまた胃痛が始まり、片づけをオットに任せる。


8月12日(土)

 マクドナルドでプリンを食べ、またスヌーピーを3匹引き取って来た。


8月13日(日)

 近ごろ胃に物を入れるのがしんどいので、「よく噛んで食べる」ことを努力目標にしている。お稽古のときはカロリーメイトと毎日果実に頼っている。


8月14日(月)

 今晩の枝豆は南部茶豆というもの。小粒で見た目はぱっとしないが、「茹でているときには部屋に香りがたちこめた」と茹でた張本人は言う。小さい分、おいしさがぎゅっと凝縮している感じ。これがもう少し大きければ口も満足するのに、と思う(まとめて口に入れれば解決するか?)。食べ物の欲は深い。


8月15日(火)

 ゼリーのバリエーションを増やそうと、濃縮の赤ぶどう液を買った。ゼリー1袋で250cc分のゼリーができる。ゼリーを溶かす水が50cc、そのうえ濃縮液を薄めるには……ここで思考が停止。オットにまかせる。数学や理科の知識はあると家事に便利だと感じることがある(そもそもわたしにとって料理は化学の実験である)。高校までで習ったことが現役当時のレベルで今でも身についていたとしたら、それは天才ではないだろうか。あのころは絶対忘れようがないと思っていたのになぁぁ。


8月16日(水)

 暑さ疲れの体を癒すべく、治療院へ向かう。その前に、『』でコーヒー懐石を食べる。いつかは食べたいと思っていたこのメニュー、オットと二人で注文するのも何なので(こういうのはやはり女性同士でしょう)、一人で行く機会をうかがっていた。
 まず吸口と称して、脚の長いグラスに入った少量のアイスコーヒーと、コーヒーのソースがかかったアイスが出てくる。次に生クリームたっぷりのコーヒーゼリー、そして(これがメインか)コーヒークリームのかかったチョコレートケーキは、ケーキそのものは甘さひかえめで、コーヒークリームを楽しむ感じ。最後に選んだコーヒー(コロンビア)がデミタスカップに出てきた。コーヒーづくしっていうだけでごきげんになる。
 治療院ではいつものマッサージ、鍼にくわえ、吸玉を初めて使った。胃の痛みをうったえたので、胃の裏側にあたる背中に四つ。温かくて気持ちがいいけれど、吸玉の痕跡はすごいらしい。本人には見えないし数日で消えるというから気にしない。
 「体に元気がない、筋肉の張りがないというより、筋肉がない感じだなぁ」と言われ、やっぱりと思いながらも釈然としない。落ちた体重は、筋肉の分だったのだろうか。筋肉の方が大事だろうに、なぜ脂肪でなく筋肉が先に落ちるのか、ともっともらしい疑問をなげかけると、施術師曰く「やっぱり大切なものって失いやすいんですよね」


8月17日(木)

 ふたたび『グルガオン』へ行きました。9時前には家を出て、渋谷東急Bunkamuraの「エドワード・ホッパー展」、新高輪プリンスホテルの「AAUGH!スヌーピー」、銀座三越の「SNOOPY in 銀座」をまわってお腹はぺこぺこ。もちろん昼には渋谷の某デパートでそばを食べた(そばは不合格だが、つゆが変わっていて楽しめた。ざるでなくてよかった)し、スヌ展では『マーシーのルートビア』でルートビアも飲んではいるけれど。
 今回もやはり最初の客(よもだ亭は夕食が早いし、外では開店時間まで待っていることが多い)。季節の野菜カレー、パンジャビキーマカレー、インドの香り米というライス二人前、生ビールとマンゴラッシー。ライスはとても長い白い米で、独特の香りがする。粘りがなくてさらっとしている。季節の野菜カレーは水分の少ないサブジ風のもの。なす、トマト、ジャガイモ、シシトウなど。バンジャビキーマカレーは唐辛子が二本も入っているので辛いのかと思ったら、それほどでもない。かすかにココナッツの味がして、酸味はない。
 そしてまた腹ごなしに散歩したあと、『どんパ』でニッキアイス(水出し)を飲む。今日はあちこち歩きまわったせいか、コーヒーを飲みながら眠くなってしまった。


8月18日(金)

 お盆で田舎に帰省していた父がおみやげをどっさり持って帰ってきた。
 特産のすだち、わかめ、叔母の家の畑で採れた野菜……なかでも枝豆がぷっくりしていてみごとである。その他もろもろ、とりあえず新鮮なものを優先に持ち帰って別館にもおすそ分けした。


8月19日(土)

 今年の夏の暑さには負けた。目が覚めたら10時過ぎ。昼のような朝食を食べる。体重は減っているけれど、体脂肪率はあまり変わっていない。
 今日は地域の夏祭りで、別館が夜店の焼きそば係りになっているという。わたしは今日も発表会の練習。オットはひそかに家の調味料を使って今までにない焼きそばを作ろうと企んでいるらしい。しかし実際は焼きそば係りではなくかき氷係りだったとか。


8月20日(日)

 ぶどうゼリーがおいしい。朝のヨーグルトの代りに食べたり、夜お腹がすいて眠れないときなどに食べると落ち着くのである。使っているぶどうジュースは濃縮でかなり濃い色をしているのだが、ゼラチンを加えると一瞬にして色があずき色に変化する。
 今日はカルディでコーヒーを買った。セール期間で何でも5%引きだというので、店内を物色していたらマンゴージュースを見つけた。これで家でもマンゴーラッシーが飲める。マンゴーゼリーだってきっとおいしいに違いない。


8月21日(月)

 鶏肉を塩と酒で下味をつけて蒸すとさっぱりとした夏の料理になる。煮豚より手間がかからなそう(特に後片づけが)だし、きっとラーメンや冷やし中華にも合うに違いない。今日は紫玉ねぎの上に坐っている。なんとなくバルサミコをかけたらどうかと思いつき、協議(?)の末、バルサミコと醤油を混ぜてみたらおいしいタレができた。今日のカポナータはレンズ豆入り。


8月22日(火)

 長袖のTシャツの上に、日よけ兼冷房よけパーカーを着たわたしは電車のなかでコチンコチンになっている。向かいに坐っているご婦人はひっきりなしにハンカチで顔の汗を拭き、扇子をいそがしそうに動かしている。扇風機の風にあたるだけでも筋肉が硬直するのがわかる。暑さには人一倍弱いのに……トホホ。


8月23日(水)

 近ごろ朝食が寂しくなったと嘆くオット。暑くて日持ちがしないうえにこちらは食べる気力が萎えている。スクランブルエッグはオットの分だけを作る。もうすこし涼しくなればアルファルファ工場を再開するのにな。しゃきしゃきしておいしいだろうに。豆は食欲のないときにはヘビーだ。他のものが入らなくなる。
 昼すぎに近所の喫茶店へ。おいしいコーヒーなら家でも飲めるけれど、気晴らしである。


8月24日(木)

 インダス文明を見に東京都美術館へ。NHKの番組ではいちばんパッとしないと思っていたが、展示はエジプトよりはるかにおもしろい。とくに好きなのが印章。レプリカで気に入ったのがあれば買うつもりでいた。実際には何個かが箱に入って売られていた。わたしは気に入ったのが一個欲しいだけだったのでやめた。
 前回エジプト文明展のときに定休日だったそば屋『池之端薮蕎麦』、今回は夏休みだった。その近くにあって前回やはり定休日だった『上野薮そば』は幸いにも開いていたのでここに入った。
 エビスビールのコップに入って出てきたのは、冷たい蕎麦茶。「せいろう」と「とろろせいろう」を頼む。わさびは練りわさびでなくおろしわさび。蕎麦はきりっと冷えて歯ごたえがあり、おいしい。蕎麦湯は銅製の急須に入って出てくる。底の方はとろりとしてまるでそばがきのよう。
 そして夜は地元に帰って『カンパーニャ』へ。注文の品は自家製チーズとトマトのサラダ、あさりの白ワイン風味スパゲティ、まぐろときのこのトマト味スパゲティ、それから夜のおすすめの鴨と幅広手打ちパスタ。生ビール。サラダのチーズはカテッジチーズに似ているが、もっと濃厚な味わい。あさりのスパゲティはニンニクの風味がきいていてぴりっと辛い。ここで白ワイン一杯追加。まぐろときのこのスパゲティは濃厚なトマト風味。この店のトマトソースはよく煮込んだ感じで、近ごろ主流のあっさりしたソースとはちょっと違う。幅広パスタもワインの効いたトマト風味で、端にギザギザの入った幅広麺は小麦粉の食感が楽しめる。デザートはこのまえ食べておいしかったカボチャのプリンと、この前食べ損ねたティラミスを頼む。ティラミスはおもったよりさっぱりした軽い感じ。今日のカボチャプリンにはレモンらしいシャーベットが付いていた。
 あいかわらずお客が少なくて静かである。会計をしているときにご主人が手を休めて出てきて「いつもどうも……」と挨拶をされた。こちらはお忍びで来ているつもりだったが、とうとう面が割れてしまったか。どうかこのままのんびりとご商売をつづけてほしい。


8月25日(金)

 山芋がおいしい。そば屋に入ればとろろそば。だったら家でもとろろご飯にしようと思い立った。のどごしがよくて食欲がないときでも食べられ、消化も助ける。やはり本能が欲していたのだな。
 ぶどう液をつかいきったので、今度はマンゴゼリーがお楽しみ。


8月26日(土)

 実家で蒸してもらったさつま芋を持ってお稽古に行った。


8月27日(日)

 マンゴジュースだけのゼリーはちょっと甘みが強かったので、ヨーグルトを混ぜたマンゴラッシーゼリーを作った。お稽古から帰るころには固まっているだろう。
 昼もろくに食べず、夕食はお稽古のあいまに大入りあんぱん(あんこがたくさんつまっている)をひとつだった。それでもオットにほとんど食べていないと指摘されるまで気がつかない。
 帰ってさっそくゼリーを食べる。口に入れると子どもに還ったような気分になる、なつかしい味がした。


8月28日(月)

 本日の夕食は、とろろ玄米ご飯、枝豆、しらすとわかめ、さつま芋と長ねぎのサブジ、オットにはビール(キリン一番絞り)。


8月29日(火)

 マンゴラッシーゼリー、一度目は大成功だった。昨日はゼラチンが溶けきらないうちにジュースと混ぜてしまい、冷蔵庫に入れる前から失敗だと確信した。今朝になってもドロドロ、そしてゼラチンだけが透明に固まっている。
 が、意外にもおいしかった。子どものころはこのような失敗をすると、ゼラチンがゴムか乾いた接着剤のようになってとても食べられなかった。今回のはちょっとゆるいはるさめ入りジュースという感じ。デザートの新種誕生……とはいっても二度と同じものはできないことになっている。
 今夜の出張料理は、別館にステーキの材料があるというので、家にあるさつま芋と長ねぎを一緒に蒸して、なぜか大量にある枝豆を加え、バルサミコで和えたサラダを持参。ステーキは大根おろしでいただく。久しぶりにお肉をしっかり食べたという感じがする。


8月30日(水)


8月31日(木)

 よもだ亭の夏休み。横浜へ一泊二日の小旅行。
 元町を歩いていたら手打ち蕎麦の看板を見つけたので裏道に入る。『汐汲坂まつむら』。木の引き戸(当然中は見えない)を開けると、狭い店内に客はいない。赤と黒を基調としたモダンな和風のインテリアで、ジャズが流れている。せいろととろろせいろを頼む。薬味はおろしわさびらしい(本わさびつきだと値段が上がる)。蕎麦は細く腰が強くておいしい。蕎麦湯は自動的に出てくる。  あとから入ってきた隣のおじさんたち二人は、上の天ざる松茸付き(大盛り)を注文していた。すでに輸入物の松茸が出ているとのこと。
 外人墓地を通り過ぎて元町公園を散策。こんな静かなところに住めたらいいなと思いながら、あまりの湿気に辟易する。エリスマン邸が無料公開されているのでさっそく入る。板張りの床がとてもなつかしい。こんな家だったら掃除も楽しいだろうと思う。突然大雨が降ってきたので邸内にある休憩室でコーヒーを飲む。大きな窓に向かった半円のテーブルに坐り、公園をながめながらのひととき。この邸宅は移築されたものなので、当時とは景色が違う。家でこんな風にくつろげたらいいねと話し合いながら、こんなに大きな家でなくていいから、このコーナーの一部と、あとは寝られるスペースだけあればいいということになった。
 雨が止んでから中華街に繰り出す。中華街はまだまだ未開地なので、今回は中華料理はパスして中国茶の飲めるお店に入ると決めている。かつての記憶と地図で『三希堂』を見つける。弁舌さわやかなお姉さんが出てきて、熱いお茶と冷たいお茶と台湾風かき氷をまず選べという。出来心でかき氷を選び、オットも雷同する。四種類のトッピングを選ぶ。亭主は愛生(ところてんみたい)、アロエ、龍眼(ライチみたいな果物)、青蛙蛋(蛙の卵みたいな小さなゼリー)、オットは愛生、紅豆(あずき)、緑豆、八宝粥(いろんな穀物の甘いお粥)を選ぶ。出てきた氷は大鉢にけた外れの量が入っている。わたしの選択はちょっと失敗だったようだ。これだけの氷を食べるなら、トッピングは冷たいデザート系ではなく、あずきなどの豆がよろしい。
 なんだかお米が食べたくなってきた。でも和食が食べたいというのでもない。ホテルの部屋にあった冊子にクイーンズスクエアのイタリア料理店『トラットリア ペッシェドーロ』が載っていたので、おいしそうなリゾットでもないかとのぞいてみると「焼きリゾット」がある。ちょっと時間が早いのでぶらぶら散歩してから入る。注文したのはアンティパストの盛り合わせ、焼きリゾット、活きハマグリのガーリック風味スパゲティ、サーモンクリームとほうれんそうのフェットチーネ、生ビール、オレンジジュース。アンティパストの盛り合わせは、5品が一切れずつ載っていた。小さな一片をフォークで分けていると、「一杯のかけそば」の気分になる。スモークサーモン、カボチャ、ソーセージの薄切り、ムール貝とトマト、魚のマリネ。少しずつ食べるのもありがたみがあってなかなかいい。焼きリゾットは、チーズの香ばしい香りがして、とてもおいしい。ハマグリは貝柱がきれいに取れるのが不思議。フェットチーネは白と緑の2色。クリームソースはさっぱりしておいしい。デザートを勧められたけれどまだかき氷が居座っているようなので断った。あの焼きリゾットはどうやって作るんだろう。



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